【怖い話】暗がりのピアノ

短編の怖い話



高野家は古くから音楽家の家系で、その家には世代を超えて受け継がれる大きなピアノがあった。そのピアノは古さを感じさせるものの、音は美しく、近所の人々はその音色を楽しんでいた。

ある日、家の長男・亮が海外の音楽学校へ留学することになり、家族は彼を送り出すことになった。出発の夜、家族が集まって夕食をとっていると、2階の部屋からピアノの音が聞こえてきた。家族は驚き、誰が弾いているのか確認しに行ったが、部屋には誰もいなかった。

それ以降、毎晩、ピアノの音が家の中に響き渡り、家族は不安を感じるようになった。特に亮の妹・彩は、その音が何かの前兆であると感じていた。

ある晩、彩はピアノの音がする部屋へと向かった。音の源を確認すると、ピアノのキーが勝手に動き、メロディが奏でられていた。彩は近くの霊感が強い女性を訪ね、相談した。女性は「あなたの兄が何かを伝えたい」と告げた。

数日後、家族に悲しい知らせが届いた。亮が海外で事故に遭い、命を落としてしまったのだ。家族は深い悲しみに暮れた。

その夜、再びピアノの音が鳴り響いた。しかし、この夜の音は、家族にとっては何とも言えない安堵と悲しみを感じさせるものだった。彩は涙を流しながら、部屋へと向かった。

部屋に入ると、ピアノの前に亮の姿があった。彼は微笑みながら彩に近づき、彼女の頭を撫でた。そして、消えていった。

以降、ピアノの音は二度と鳴らされることはなかった。しかし、家族は心の中で、亮の音楽とその存在を感じ続けていた。



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