【怖い話】ヘンなおじいさん

短編の怖い話



小学生のころに住んでいた家と親戚の家が3軒隣っていう近距離で、親子そろって仲良かったんで、よく遊びに行ってたんだよね。
親戚んとこも同い年の男の子の尊がいて、趣味も合ったもんだから週末なんかに泊まりに行くこともあったんだ。
親戚のうちは両親共働きだったんだけど、尊は一人っ子で今でいうかぎっ子だった。
そんな環境だから基本昼間は親の小言なんかも聞くことなく、のびのびと家の中で過ごせたんだよね。
ただやっぱり暴れて物を壊したりっていうのはご法度だったけど。
近所の中では比較的大きな一軒家だったんだけど、仏間も広くて畳が心地よくて夏場は仏間で昼寝することもあったんだ。

俺が尊の家で奇妙な体験したときは8月のお盆時期で、この時は町内の集まりかなんかで親がいなかったんで親戚の家に行ってたんだけど。
午前中、近所の公園で遊んで疲れたしこの日は少し涼しかったから、お昼食べてから昼寝しようってことで仏間で寝てたんだよ。
俺はウトウトしてすぐ寝ちゃったんだけど、尊は寝つきが悪くてしばらく横になってぼーっとしてたらしい。
俺も尊も寝に入ってから1時間くらいで、玄関のドアベルが鳴ってさ。
2人で玄関に行って、チェーン掛けたままでドア開けたら、両頬がコブついてるみたいに垂れ下がっていて猫背の、杖をついてるおじいさんがいたの。
立派な髭も生やしてたんだけど、目が薄くて開いているのか閉じているのかわからないくらい細くて、でも笑ってるように見えた。
服装は着物だったんだけど、大きな白い袋担いでたのが不思議だった。
「家の中に入れてくれないか」
いきなりおじいさんにそういわれたんだ。
さすがに子供だけだし、親からも誰か来るって聞いていないうえに、普段から知らない人は家に入れるなとか口うるさく言われてるんで拒否したんだ。
それでもおじいさん、すっごいニコニコ顔でしつこく入れてくれっていうんだよ…。
このニコニコ顔がなんか子供心に物凄く怖く思えてさ。
「知らない人入れちゃいけないって言われてるんで!」
って、2人で大声で言ったらおじいさん、スゥッと表情が変わってさ。
にらみつけるような感じで俺らを見て言ったんだ。
「今入れないと一生後悔することになるぞ」
一体何を意味しているのか分からなかったんだけど、変質者か泥棒かなと思って俺らはおじいさんを拒否。
そうしたらおじいさん、怖い顔のまま何も言わずに敷地内から出て行ったんだけど、あんなことになるとは思わなかった。

その日俺は尊んちに泊まる予定で、夕飯時におじいさんの話を尊が親にしていたんだけど、それを聞いた尊のお父さんが慌ててどこかに電話してたんだよね。
お母さんもなんだか落ち着かない様子で、「何でもっと早く言わなかったの!」って怒られたんだけど、理由は教えてもらえなかった。
次の日のお昼頃に俺と尊が仏間に呼ばれていってみたら、そこに昨日家に来たおじいさんそっくりな木像があってさ。
お酒とかお米がお供えされてたんだけど、この木像は今まで一族を守ってくれていた大黒様って話で。
年に一度だけ、家に来ておもてなしを受けて帰るかわりに、商売繁盛のご利益いただけるとかっていう話だったんだけど、拒否したら今までのご利益の倍返しくらいの不幸が訪れるとか…。
正直そんなの嘘だろうって思ってた。

尊の家は会社とマンション経営していて、どっちもそこそこいい状況だったらしいんだけど、お盆明けに急に傾きだした。
会社の方は社員の横領事件発覚、不祥事なんかもボロボロ出てきて会社が傾き、マンションの方も欠陥住宅だったり、地震の影響で立て直しが必要になったり、自殺や変死っていったことも立て続けに起こったらしい。
そんなこんなで会社もマンションも手放すことになって、金銭的にもかなり追い詰められ自宅も売却してぼろっちいアパートに引っ越してた。
このときはうちの親が尊の家族を支えて、何とか十年以上かかって借金返済やトラブル解決はしたんだけど…心労・過労がたたったのか尊のお父さんが亡くなってしまって、その後すぐ尊のお母さんが行方不明に…。
事件に巻き込まれたんじゃ、っていう話が有力なんだけど、最後に尊のお母さんを見た人が言うには、猫背で杖をついている老人と話ししていたって。頬が両方ともコブついてるみたく垂れ下がって、ヒゲも生えてて、白い大きな袋を担いでたっていうね…。
まるであのとき俺らが家にいれなかったおじいさんそのものの人物で、本当に拒否したことが原因でこんなことになったのかと後悔してもしきれない。

そして尊だけど…。
成人を迎えてから、夢にあのおじいさんとお母さんが出てくるようになったって言ってた。
「もうすぐ迎えに行くから」
そうおじいさんに言われたそうで、お母さんはその傍らで悲しそうな顔してたとか。
「迎えに行く=死ぬ」ってことだと直感でわかった尊は、今とあるお寺でどうにかこのおじいさんから逃げることができないかと相談してるらしい。
仏門に入って修行を積んでいる最中だけど、住職いわく難しいってさ…。
何とか助かってほしいけど、こればっかりは俺はどうにもできないし、最近俺の周りでもあのおじいさんのような人物をよく見かけるようになったんだけど…。
一族の人間って、家族だけじゃないのか?
親戚まで含めて仕返しされるってこと?
うちは普通にサラリーマンで、自宅で大黒様お祀りしてるとかないし、あのおじいさん追い返した後も別に不幸があったりとか親の勤めてる会社が潰れたりってことないんだけど…。



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