【怖い話】ミーコの復讐

短編の怖い話



今は実家から離れて一人暮らしをしていますが、実家では祖父母も同居していました。
私は子どものころから他の人が見ることのない、不思議な存在を見ることが多く中学生くらいになってから、それが霊や妖怪などといわれているものだという事を知りました。
物心ついたときは他の人もそれらを見えているものだと思って、幼稚園の友だちや先生、親戚などに話をしておかしな子扱いされたこともあります。
しかしうちの母や祖母には見えていて、私が見ているものがどんなものかわかっていたようです。
「見ても秘密にしておかなきゃダメ」
「構っちゃいけない」
「ムシしなさい」
など、徹底的にその存在を「他人に話さない・無視するように」と言い聞かされていました。
年を重ねるにつれ、それらが特定の人にしかわからない霊的な存在と知ってからは、見えても周囲に話をすることはなかったのですが……。
祖父の死にまつわることで、無視できない状態になったことがあったんです。

今はもう20代後半で会社勤めをしていますが、小学校3年生くらいのときに、祖父が大きな事故にあい亡くなっているのですが……。
祖父はもともと気性の激しい性格なうえ、ものすごい我儘で自分が黒と言えば白いも黒くならないときの済まないタイプの人でした。
家でもよく癇癪をおこして祖母や母に当たり散らしているのを見ていて、小学校にあがるころには自分から祖父にあまり近づかない・会話しないようにしていたんです。

ある日近所の友達と下校途中に、原っぱにあった段ボールの中に子猫が3匹いるのを見つけました。友達が親に飼いたいと相談したらしいのですが、これ以上増やせないと言われて、数日間下校途中に餌やりをしていたんですよね。
一週間くらい経ったころでしょうか。
丁度台風が私たちの住んでいる地域に直撃するかも、というニュースが流れて、子猫たちが心配で親に内緒でうちの縁側の下にダンボールごと子猫を運んで隠していたんです。
鳴き声でバレやしないかとヒヤヒヤしていたんですが、近所の外飼いのネコや野良猫がよく縁側の下に入り込んでいることもあって、ばれないだろうと思ってたんですよね…。
でも私の考えが甘かったようで、台風が去った翌日祖父に子猫たちが見つかってしまいました。

その日は日曜日で、朝早くから祖父が庭で盆栽をいじってたんです。
台風のせいで餌をあまりあげられなかったせいか、お腹を空かせたらしい子猫たちがものすごい鳴いているのに祖父が気付き、子猫たちを見つけたという流れなんですが、誰が勝手に置いたのかと激怒し始めたんですよね。
今までにないくらいな怒り方だったのですが、隠していて後でバレるとお仕置きがひどくなるの分かっていたんで、泣きながら自分が置いたと話ししたんです。
そしたら祖父にビンタされ、ものすごい勢いで罵声に近い怒りをぶつけられました。
これだけならまだ我慢できたのですが、祖父は何を思ったのか子猫を元の場所に戻せというのではなく、私の目の前で3匹いた子猫を虐待して殺してしまったんです……。
私は一番のお気に入りの子を「ミーコ」と名付けていました。
どのようなことをされたのかは、ここで書くのを控えますがとにかく子どもの目の前でやるようなことじゃない、とだけ言っておきます。
怖さとショックで大泣きしている私の声に気づいた祖母が慌てて飛んできて、私を部屋に連れて行ったのですがショックで数日学校を休んだほどでした。

祖母があまりに子猫が可愛そうだからと、庭のすみにお墓を作ってくれたので、毎日助けてあげられなくてごめんね、と手を合わせていたんです。友達もときどきお墓参りに来ていました。
祖父には「たかがネコくらいで」と、嫌味言われたりしていましたが……。
一週間くらい経ったころ、夢にミーコたちが現れたんです。
しかもその側にはミーコのお母さんなのか大きな黒猫がいました。
助けてあげられなくてごめんね、と大泣きしている私にミーコはすり寄って甘えてきたところで目が覚めたのですが、実際に寝ながら涙を流していたことに驚いていたことを覚えています。

夢にミーコたちが現れたころから、祖父がなんだかおかしいことに気づきました。
何もない所を何度も確認したり、「ネコの鳴き声が聞こえる」と言うことが増えてきたんです。
しかし祖父が「ネコの鳴き声が聞こえる」というときは、家族の誰もネコの声を聞いていないんですよね。
そして一ヵ月くらい経った頃から、祖父の体にネコの爪でひっかいたような傷がつくようになったんです。
祖父自身は自覚がなかったようですが、祖母が「最近おじいちゃんが夜中にうなされている」というのも増えていました。
そして庭に入り込む野良猫に対して物凄い嫌悪を抱くようになって、視界に入るだけで叫んで物をぶつけて追い払おうとしたり……。
近所の人にはボケたのかと言われていたほどでした。
このころ私は祖父の足元や顔の周りに、黒い靄のようなものがまとわりついているのを見るようになりましたが、誰にも話ししませんでした。

そしてミーコたちが死んで2ヵ月目。
丁度ミーコが死んだのと同じ日に、祖父が仕事帰りに交通事故に巻き込まれたという連絡があったんです。
かなり大きな事故だったらしく、祖父は大けがを負っていました。
祖母と病室に行ったとき、夢で見た黒猫がものすごい怖い顔をして祖父の手足をかじっていたんです。
この時は黙っていたんですが、数日後祖母と母、そして私でお見舞いに行ったときは、黒猫が祖父のお腹を、ミーコたちが顏をたべていたんです……。
さすがに怖くてその場で大泣きしてしまい、祖母と母に見えたものを叫んだら、2人とも口に手を当てて「誰にも話ちゃいけないよ?」とだけ言って、私は病室の外で待っているように言われました。
祖母・母ともに霊感が強く、うちの家系は女性に霊感の強い人が出るというのを後で聞いたので、すでに2人にはわかっていたのかもしれません。

結局祖父の意識は戻ることなく、事故から1ヵ月後、ミーコたちが死んだ月命日にこの世を去りました。
この日の夜、また夢にミーコたち子猫が現れましたが、とても優しい顔をしてゴロゴロと喉を鳴らしながら私にじゃれついていたのですが、黒猫が現れると、その後をついて私から離れてどこか遠くへ行ってしまったところで目が覚めました。

祖父はミーコたちに復讐されたんだと思います。
ただ黒猫のことが気になって、後日祖母と母にさりげなく話したところ、私と友達がミーコたちを見つける一週間くらい前に、庭に入り込んだ黒猫を蹴り飛ばして追い払っていたと……。
もしかしたらその黒猫、ミーコたちの母親で、祖父が蹴り飛ばしたことが原因で死んでしまったのでしょうか?



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