【怖い話】音のないピアノ

短編の怖い話



東京都心から少し離れた古びたアンティークショップで、美奈子はアンティークのピアノを見つけた。細工が施されたその美しい外観に惹かれ、即座に購入を決意した。

新しい家にピアノを運び込んで早速鍵盤を叩いてみたが、一切音がしなかった。気に入って購入したのに、とガッカリした美奈子。しかし、夜中、ピアノの近くに耳をすましたと、かすかな声や音楽が聞こえてきた。

その音は、かつての戦争中のシーンや大正時代の風景、そして明治時代の風景へと変わっていった。声や音楽、さらには泣き声や笑い声、さまざまな時代の音が耳に飛び込んできた。

美奈子は興味を持ち、毎晩ピアノのそばで過去の音を楽しむようになった。しかし、ある晩、彼女がピアノに耳を寄せると、恐ろしい叫び声や怒号、そして物音が聞こえてきた。さらに、その声が「助けて……」という悲痛な声へと変わっていった。

怖くなった美奈子は、アンティークショップの店主にこのピアノの過去を尋ねに行った。店主は「このピアノは昔、ある家で使われていたもの。家の主人は音楽家で、彼の家族や客たちがこのピアノの周りで過ごした時代をこのピアノが記録しているのかもしれません」と語った。

美奈子は、ピアノが過去の悲しい出来事や痛ましい事件を記録しているのだと確信した。彼女は霊能者に相談することに。霊能者は「このピアノは過去の痛みや喜び、さまざまな感情を吸収し続けてきた。解放しなければならない」とアドバイスした。

美奈子は、その夜、ピアノの前で祈りを捧げ、ピアノに宿った過去の魂たちを解放する儀式を行った。そして、翌朝、彼女が再びピアノの鍵盤を叩くと、美しい音が響いた。ピアノは再び音を奏でることができるようになったが、その音には深い哀愁と過去の重みが宿っていることを、美奈子は感じ取ることができた。



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