【怖い話】肝試しの記憶

短編の怖い話



夏休みのある日、高校生のリョウタとその友人たち5人は、近くの廃校として知られる学校で肝試しをすることに決めた。地元の人たちからは「夜になると学校から子供の笑い声が聞こえる」という噂をよく耳にしていたが、彼らはそれをただの都市伝説とばかり思っていた。

夕暮れ時、彼らは懐中電灯を持って廃校に足を踏み入れた。目的は、3階の音楽室で過ごすこと。その部屋は最も噂が多かった場所だった。

廃校は予想以上に荒れており、廊下はガラスの破片や埃で覆われていた。リョウタたちは少し緊張しながら、静かな闇の中を進んでいった。

彼らが2階に差し掛かったとき、突然、遠くの方でピアノの音が鳴り響いた。驚いた彼らは懐中電灯をその方向に向けると、3階の音楽室のドアがゆっくりと開いていた。

「これは都市伝説じゃなかったんだ…」

しかし、彼らは冒険心を抑えきれず、音楽室に向かって進んだ。部屋の中は意外と綺麗で、真ん中にはピアノが置かれていた。リョウタがそのピアノに手を伸ばすと、突然、白いドレスを着た少女の姿が目の前に現れた。少女は微笑みながら言った。

「あ・・・そ・・ぼ・・・」

彼らは恐怖で声も出せず、ただその場を逃げ出した。外に出ると、夜の空には満月が輝いていた。彼らは安堵の息をつきながら、自宅に戻った。

翌日、リョウタは夜の出来事が夢だったのではないかと疑い始めた。そこで彼は再び廃校に行くことを決意。昼間の明るい時間に、彼は一人で音楽室を訪れた。

部屋の中には何もなく、昨夜見た少女の姿もなかった。しかし、彼が部屋を出ようとしたとき、足元に一枚の古い写真を見つけた。それは、白いドレスを着た少女がピアノを弾いている姿だった。写真の裏には「最愛の娘、ユリ 1965」と書かれていた。

リョウタは地元の図書館で調査を始め、ユリという少女が50年前の事故で亡くなったことを知る。彼女は音楽室での練習中に窓から転落し、そのまま命を落としていた。

夜、リョウタが自宅の部屋で眠ろうとしたとき、突然、ピアノの音が聞こえてきた。彼は急いで窓を開けると、月明かりの下、遠くの廃校の窓からユリが微笑みながら手を振っていた…。



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