【怖い話】拒食症

短編の怖い話



今になってみれば、あのときこんなことあったなという思い出になっているけれど、当時は本当に自分がおかしくなっているのがわかりませんでした。

始まりは自分の体形のことで、男子からよくからかわれていたことでした。 幼稚園時代から周囲の子と比べると、ふくよかな体型をしていたんですが親は気にせず、他の子と比べると食事の量も多かったんですよね。
中学生になるころには、もうそれはふくよかな体型になって女子からもからかわれるようになってしまい、ダイエットしたいと思うようになったんです。
でも食事制限すると親が周囲に「ご飯食べてくれない」と、理由も言わずに私を悪者にして話を広める始末。
運動しようとするとそれはそれでまた邪魔いに入って、なかなかダイエットできなかったんですよね。
そんな日が続いて、お彼岸に祖父母のお墓参りに行ったときに、アレと会ってしまったんです。

祖父母のお墓のある霊園は、地域ではかなり古いお寺が管理していて、江戸時代以前からあったと聞いています。
祖父母や親族のお墓は近年になって建てられたので、比較的墓地の中でも整備されている場所にあり、毎年欠かさずお墓参りに家族そろって行っていたんです。
その年のお墓参りの日は曇り空で、時間帯的な問題もあってかお墓参りしている人の姿が全くありませんでした。
いつもどおりお墓のお掃除をして、お供えやお線香をあげていたんですが、ふと何かに見られているような気がして、左側をみたんです。
左手にはまだお墓が数列あったのですが、その一番端っこにガリガリに痩せた女の子がうつむいて立っていたんです。
伸長は私と同じくらいのようで160cm近くはあったんじゃないかと。
その日は気温が低く長袖でもちょっと肌寒いくらいなのに、白い半そでのワンピースを着て、大きなツバ付きの帽子をかぶっていたんです。
そしてその子が顔を上げたんですが……。
ホラー映画に出てきそうなくらい、顔も痩せこけて、目が落ちくぼんでいてまるで餓鬼のような感じで、肩くらいまである髪の毛もまばらで、もしかしたら痩せすぎて抜けてるんじゃ?って思うほど、本数が少なかったのを覚えています。
家族に呼ばれて帰る準備をしていたとき、両親や妹に女の子の話をしたのですが、「そんな子いない」と言われてびっくり。
もう一度お墓の方をみると、確かに誰もいないんですよね。
ただこのとき、耳元で誰かが何かつぶやいているような声がしたような気がしたのですが、あまり気にせず自宅に戻りました。

帰宅途中、車の中で急に寒気と酷い眠気に襲われて家につくなり布団に入って寝てしまいました。
結局翌朝まで私は起きず、寒気は相変らずあったものの熱もなかったのでとりあえず学校に行ったんです。
いつもなら3時間目が終わるくらいでお腹がすいてしまうほどだったのに、この日は全くお腹がすかず、食べ物を見ると吐き気がしてしまうといった状態でした。
そしてなぜか「痩せなきゃ」というのが頭から離れず、自宅での夕飯も全く食べずに痩せるために体操なんかを始めたんです。
翌日もその次の日も……。
食べ物を見れば吐き気を催すし、少し食べられたと思ったらすぐ吐いてしまい、そのくせ痩せるために運動するというおかしな状態が続いていきました。
そして時々、夢にあの墓地でみた女の子が現れ、私に痩せなきゃバカにされ続けるとか、痩せてみんなを見返しなさいとか言ってくるんです。
あの頃はもう「痩せなきゃ」っていう、強迫観念にとらわれて周囲に何か言われてもご飯食べないし、食べたらその分すぐ消費しなきゃ、っておかしいくらい運動していました。
1年、そんな生活が続いていました。
当然、食べないのだから激やせしていき、私は心も壊れかけていたのでしょう。
夢に出てきていたあの墓地の女の子が、起きているときにも見えるようになったんです。
このときのこと私はあまり覚えていないのですが家族や友人に聞いた話だと、「あの子が、まだ太ってるって言ってる」とかおかしなこと言ってたそうです。

さすがに親が心配して精神科に私を連れて行き入院となったのですが、病院では墓地でみた女の子以外にもガリガリに痩せている人を何人も見ました。
病院側は私の頭がおかしいと思っていたようですが、話を聞いていた妹が私が墓地で見た女の子のこと思い出して、ちょっと地元で有名な霊能力者に家族で相談しに行ったそうです。
霊視した答えは「憑りつかれている」と。
家族が無理を言って1日だけ外泊許可をもらい、私を除霊するために霊能力者のところに連れて行きました。
何故か私は病院から出ると怖いことになると思って物凄い暴れたのですが、車に押し込められ霊能力者の自宅へ。
除霊中のことは覚えていないのですが、私に憑りついた子が生前の不幸なことを語り、私と同じく体型を気にして過剰なダイエットをして亡くなったと言っていたそうです。
自分と同じ悩みを持っている子なら自分の気持ちを分かってくれると思った、同じ目に合わせるなどとも言っていたそうですが……。

除霊直後、自分の意識が戻ったとき何だか悲しい気持ちで一杯で、涙が止まらなかったのを覚えています。
まともに歩くことも困難なほど体力も落ちていたので、結局はしばらく入院していたのですが、除霊前と除霊後の人が変わったかのような違いに、病院の先生や看護婦さんはとても驚いていました。
病院でみた墓地の女の子以外のガリガリな人について聞いてみたんですが、「そんな人はこの病院にはいない」と……。
もしかしたら女の子の霊が他の霊を呼び寄せていたのでしょうか?
この一件以来、両親も私の気持ちをきちんと理解してくれ、無理に食べさせることがなくなりました。
痩せることができたことについては、ある意味感謝してもいいのかなと思いつつ……亡くなるまで追い詰められてしまった女の子に少し同情している自分もいます。



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