【怖い話】閉じ込められたその場所は…

短編の怖い話



子どものころ田舎暮らしだったんだけど、近くの山の斜面に大人が数人はいることができるくらいの穴があったんだよね。
結構奥深くて近所の子と探検しているうちに、そこがいつの間にか秘密基地みたいになってた。
その穴、横道もあってそこは大人が2人くらいかろうじては入れる大きさで、もしかしたら他につなげるのに穴をほってたのかなとか、子どもらしいことを考えてたんだけど。
あれは小学校1年生くらいのときで10月の後半くらいだったかな。
ある日、自分と他の子3人とで、秘密基地で遊んでいたときにちょっとしたいざこざが起きて自分とリーダー格の年上のAとで喧嘩になった。
他の子はAのことが怖くてAに逆らえないもんだから、Aと一緒になって自分のこと責め立ててきて。
その辺の石とか投げつけられて、とっさに横穴に入り込んだんだけど、その途端に天井が崩れて、自分閉じ込められちゃったんだよね。
さすがにヤバイと思ったのか、A達は大人呼んでくる、っていって秘密基地出て行っちゃったんだけど。

かろうじて上のほう10cmくらいは隙間が開いてたんだけど、子どもが素手で掘るには土の量が多すぎて助けが来るの待つしかなかったんだ。
Aたちがいなくなった途端に真っ暗で静かになったもんだから、なんか急に怖くなってひざ抱えて目閉じて座ってたんだけど。
気が付いたら寝ちゃってたらしく、目が覚めたときにぼそぼそと男の人の声が聞こえたんで、大人が助けに来てくれたのかと思った。
でもね、目の前の土が減ることもなく、ただただ真っ暗な世界で土の向こう側に人のいる気配もないんだよ。
「ふぅ……」
って、急に耳元で大きなため息聞こえてさ。
慌てて横とか後ろ見るんだけど当然誰もいない。
気のせいだと思うようにしてたんだけど……。
「たすけて」
「いたいよぅ」
そんな大人とも子どもいえない、苦しんでる人の声が聞こえてきたうえに、何かが自分の足首、掴んでる感覚があった。
もうね、逃げ場場所がなくて、怖くて怖くて半泣き状態できつく目を閉じてただひたすら大人が助けに来てくれるの待ってたんだ。

どれくらい待ってたんだろう。
気が付いたらまた眠ってたようで、目が覚めたら声も聞こえないし足首を掴んでいる感覚もなくなってた。
でも相変わらず周囲は真っ暗だし、眠る前と比べるとものすごく寒くて体育座りしてがたがた震えてた。
そしたらまた……。
あの痛々しい、助けを求める声が聞こえてきて。
必死に気のせいだと思い込もうとしてたんだけど……。
「逃げられないよ」
突然男の子の声が左耳の真横で聞こえて、びっくりして左側を向いたら、ズタボロの服を着た男の子がいたんだ。
さっきまで誰もいなかったのに。
暗さに目が慣れてきて、見えてきた男の子の容姿は……。
いつだったか、戦時中のパネル展示でみたときのようなモンペみたいなズボンに半そでシャツ。
でももう服はズタボロで顏が右半分、なくなってた。
手とか肩とか、見える範囲の部分もあちこち肉がこそげ落ちたりとかしてて……。
「誰も助けてくれないよ?」
男の子は自分にそう言ったんだけど、何だかその表情が嬉しそうで気持ち悪かった。
もしかして自分、このまま助けてもらえなくて死ぬのかな……なんて考えてしまったんだけど、それがわかったのか男の子はニコニコしてさらに言うんだ。
「ねぇ、友達になろうよ!僕たちきっといい友達になれるよ!」
そういって、男の子は自分の首を両手で思いっきり締め付けてきて、逃げることもできずそのまま気を失ってしまった。

再び気が付いたときには、病院のベッドの上だった。
大人になってから当時の話を聞いてみたんだけど、どうもAたち秘密基地を飛び出したはいいものの、大人にばれて怒られたらと思って最初は黙っていたらしい。
夜になってうちの親が、自分が帰ってこないと大騒ぎになってAたちが白状して助けに来たのがその日の深夜0時すぎ。
大きな岩とかあっててこずったものの、自分は気を失ってたんだそうだ。
病院に運んだら低体温症でもう少し遅くなったら危なかったとか……。
あの秘密基地に使っていた場所、大人たちから聞いた話だと昔防空壕として使われていたんだそうで、逃げ込もうとした人が途中で被爆したり銃撃されてして亡くなったこともあったらしい。
子どもが入り込んだら大変だからと、大人たちの間で埋めてしまおうという話が出ていた矢先に、自分が生き埋め状態になってしまったと。

自分が見たもの、信じてもらえないと思ったけどなぜか言わなきゃってそのとき強く思って、大人たちに話したら、隣んちのおじいちゃんが泣きだしてさ。
多分それ、自分の息子だろうと……。
その後すぐにその防空壕は立ち入り禁止にされたんだけど、近くに亡くなった人のための小さなお地蔵様が作られた。
でも……あの男の子本当に隣んちのおじいちゃんの息子だったかはわからないけどね。
しかしこの話が広がったのか、今となってはその場所心霊スポットとして事実とは全く違う理由付けされているらしいよ。
あえてどことは言わないけどね。



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