【怖い話】かつら

短編の怖い話



もうかれこれ10年年くらい前、高校時代の話ですが、私の周りで自分の髪の毛でかつらを作るということが流行っていた時期がありました。
私も友人のAとBも髪の毛が長く、短くする予定はなかったのですが、周囲でかつらづくりが流行ったことから、腰まで髪の毛が伸びたら、みんなで一緒にかつらを作りに行こうという話しになったんです。
でもそこまで伸びるのにはかなりの時間がかかります。
高校こそ一緒でしたが、大学や就職先はばらばらでかつら作りのこと、すっかり忘れていたんです。

そして去年、AとBがお盆で帰省した際に会ったのですが2人とも私と同じく腰まで髪の毛伸ばしてたんですよ。
どうも2人はかつらの話覚えていたらしくて。
すっかり忘れていた私は、Aにかつらのことを言われて思い出したのですが、このときいきなりかつらを作りに行こうと言われるとは思いませんでした。
お盆だからどこも休みかと思ってたら、Aの親戚で美容院を経営している人がいるらしく、その人経由でカツラが作れると。
「カットからかつら制作までお願いできるよ!料金もちょっと安くしてくれるってさ!」
AもBもかなり乗り気だったのですが、私は髪の毛切るつもりなかったので断ろうと思ったのですが、あまりの勢いに断り切れず……。

時期的なこともあってか、なんやかんやと出来上がるまで一ヵ月くらいかかって、自宅に郵送されてきました。
着用したときにちょっと違和感を感じたのですが、まぁ普段かつらなんかつけないからだと思ってたんですよね。
部屋のすみに箱に入れて置いておいたのですが……。
その日の夜。
布団に入ってうとうといていると、何だか妙な雰囲気で落ち着かなくて起きようとしたら、布団の上に何か黒い丸いものがいることに気付いたんです。
ビックリしたものの声が出ずに固まっていると、それはだんだん私の頭の方へと移動してきました。
でも不思議と重さを感じないんですよね。
一体何なのかわからず困惑していると、目が慣れてくるにつれそれが何だかわかったんですが……。
信じられないんですが、黒い塊は「かつら」だったんです!
寝ぼけてるのかと思ったんですが、かつらはゆっくりと首元まで来ると、髪の毛で私の首を絞めてきました。
かなり強い力で絞められていたので死ぬかと思った瞬間、気を失ってしまいました。
目が覚めたら翌朝で、布団の上や周囲にカツラは見当たらず。
慌てて箱の中をみるとそこにはきちんとしまわれているかつらが。
やっぱり寝ぼけてたのかと思ったのですが、身支度をしようと鏡をみてびっくり。
首筋に細い縄のようなもので締められた痕が赤く残っていたんです。
一体何がどうなってるのかわからないまま、その日は首の赤い痕が目立たないようハイネックのトップスで過ごしました。

帰宅してからすぐ箱の中のかつらを確認したのですが、動いた形跡は全くないんですよね。
夕飯やお風呂を終えてから、ふとまた夜中に首を絞められたら?と怖くなって、Aにメールで寝ぼけてたのかもしれないけど、とカツラに首を絞められたことをぼかして伝えたら、「あ、なんかお店の方で間違えて私のかつらがそっちに行ったみたいよ?」と。
一週間後にAが家の都合で予定があるからそのときに交換しよう、って話になったんです。
Aとのやり取りはそれで終わったのですが、かつらをどうしようかと悩んだ結果、箱ごと押し入れにしまったのですが、その日も夜中にまたおかしなことが起こりました。

今回はかつらが布団の上などにいた、というわけではなく押し入れの中で何かがドンドンと暴れている音がひどかったんです。
今にも押し入れが開いて中から何か飛び出してこないかと怖くなり、布団を頭からかぶっているうちに気が付いたら眠ってしまったようで朝になったら静かになっていました。
一週間、毎日そんな感じで夜も落ち着いて眠れず寝不足気味になっていたんですが、不思議と押し入れに入れてからは首を絞められるということはありませんでした。

Aと会う当日、押し入れにしまっていたかつらを取り出そうとしたところ、押し入れ内に引っかき傷が凄くついていてびっくり。
そしてかつらの入っている箱に、私が子どものころに大切にしていたウサギのぬいぐるみがなぜか入っていたんです。
かつら自体は特におかしなところはなかったのですが……。
Aとの待ち合わせ場所に行き、カフェに入って話をしていたときにかつらを交換したのですが、なんだかAが不機嫌だったんですよね。
何かあったのかと聞いても「何でもない」の一点張りだったんですが、帰り際に「アレに邪魔されなかったら死んでたのに」って……。
どういう意味なのか分からず、その日はそのままAと別れました。

後日Bと会うことがありかつらの話になったのですが、このときAが学生時代にAの好きだった人と私が付き合っていたことを根に持っていたと聞かされびっくり。
そしてかつらも、わざとAと私のものが誤配されるように仕組んでいたらしいとも。
なんでも呪いをかけるとか言っていたらしく、Bは冗談だと思っていたようです。
でも私の体験と、先日のAの様子からAが本当にやったんだと分かりビックリしていました。
たまたまBの知り合いで霊能力者がいたので念のためみてもらったら、私が子どものころに大切にしていたウサギの人形が、体をはってAの呪いのかかったかつらから守ってくれていたそうです。
その後はAとは音信不通になってしまい、どのような状況なのかはわかりません。
ウサギの人形は押入れから出して、机の上に飾っています。



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