【怖い話】離れに潜んでいたもの

短編の怖い話



うちは昔この辺ではそれなりに裕福な家だったそうです。
大きな庭もあり家も武家屋敷とまではいかないまでも、立派なお屋敷だったそうですが、祖父母の時代に離れ以外の部屋を改築し、私が生まれたときに小さい子が住みやすいようにと、トイレや階段、キッチンなどを今風のデザインに変えたので昔の面影が残っているのは小さな蔵と離れのみ。
ただ塀や外装は昔のままなので、外から見ると古い屋敷に見えるため友達からは幽霊が出そうとからかわれることがよくありました。

小さいころから友達と自宅で遊んでいると、友達が足音が聞こえる、今誰かいたなどということが多かったのですが、自分ではあまり意識したことがありませんでした。
ただたまに一人で2階の部屋にいるときに、誰かが階段を上がってくるトントン、という足音が聞こえたり、廊下を歩いて床がきしんでいるような音が聞こえることはありました。
寝ているときも人の気配のようなものを感じることもありましたが、全て気のせいだと思っていたんです。

離れの部屋は小さい頃から入ってはいけないと言われていて、私は一度も入ったことがありませんでした。
小さい頃はオバケが出る、部屋に入るとおばあちゃんに怒られるなど言われていたので、怖いのと怒られたくないのとで近づかないようにしていたんです。
でも中学生くらいになったころには、オバケなんていないと思い一度離れの部屋まで行ってみたのですが、離れは廊下が薄暗く古い木造なせいもあってか、重苦しく不気味な雰囲気が漂っていて、部屋の手前で引き返しました。
祖母や両親に離れの部屋のことを聞いても、詳しいことは知らないけどあそこは良くないものがいるから入ってはいけないと、代々言われているとだけ。
学校で友達の裕子にこの話しをしたら、興味津々でした。
「今週末に泊まりに行くから、夜中に一緒にその部屋に入ろう!」
そう言いだしたんです。
私自身あまり霊的なこと信じていなかったのもあってOKしたのですが、今になって思えばこのとき断っておけばよかったと後悔しています。
両親や祖母に裕子のお泊りを聞いたら、すんなりOKしてもらえたので予定通り裕子は土曜日にうちに泊まりに来ました。
丁度宿題が出ていたのもあって、宿題を済ませてからテレビを見たりゲームをしていたのですが、たまに裕子が廊下を気にしているのが気になりました。

深夜、祖母も両親も眠ってしまっているのを確認してから、私と裕子はなるべく床をきしませないようゆっくりと歩きながら離れに向かいました。
このとき私の後ろに裕子がいたのですが、裕子以外の誰かの気配や足音がしていることに気づいたんです。
気配もすぐ隣にいるというのではなく、周囲を囲まれているような感じで、足音は私の前から聞こえ、裕子も気になっていたようですがお互い何も言わずに離れの部屋へと向かいました。

以前離れの部屋を訪れたときには気付かなかったのですが、部屋のドアには昔はきっちり貼られていたであろう御札が張り付いていました。
でも誰か無理やりドアを開けたのか、お札は真っ二つになっていたんです。
「どうする?このまま戻ったほうがいいような気がするけど」
昼間とはまた違う、異様な雰囲気に押されて私は部屋に戻りたかったのですが、裕子は変にテンションが高くて結局中に入ることに。
鍵穴があったので、鍵がかかっているのかと思ったらすんなりドアが開き、中から強烈な腐敗臭が漂っていました。
2人とも思わず鼻を手で覆って入口から中を見たのですが、月明かりだけだったので部屋の隅まではしっかり確認できません。
でも部屋の中に人間が入ることのできる、大きな檻があったのは確認でき、つないでおくための鎖のようなのもありましたが、中に人や動物などはいませんでした。
「ほら、やっぱり何にもいないじゃん!」
そう裕子が言った瞬間、裕子の背後に黒い人影が見えて思わず叫んでしまいました。
私の声に驚いて振り返った裕子にもそれが見えたようで、慌てて私の部屋に戻りました。
走っていたのでかなり音がしていたはずなのに、両親も祖母も起きてこず、部屋に入ってドアを閉めると、中に入れないようにドアのカギをかけました。

部屋の電気を消したらあの人影が入ってくるんじゃないかと思って、つけっぱなしにしていたのですが、気づいたら眠っていました。
目覚めたときはもう午前6時くらいで、裕子がいなくなっていたんです。
ドアを開けて部屋から出たらしくトイレかなと思ったのですが、祖母がものすごい剣幕で怒鳴りながら私の部屋に入ってきて……。
「お前らあの部屋に入ったのか!?」
昨夜のことを聞かれ、祖母の剣幕に押されて私は正直に話しました。
「何てことを……」
祖母に連れられ居間に行くと、虚ろな目をした裕子がソファーに座っていました。
祖母から聞いた話では、あの離れは昔、家のしきたりを破った人や障害があって周囲に暴力をふるうような人を外に出さないよう監禁しておく部屋だったそうです。
そこで亡くなった方もいて、家で幽霊を見るという人が増えたためにお坊さんに頼んで封じていたのだとか。
ドアの御札はそのときの物だったらしいのですが、私が生まれた年に父の友人が来たときに面白そうだと無理やり開けてしまって御札が破れ、また幽霊が家の中を歩くようになったそうなです。
部屋を封じたお坊さんはすでに亡くなっていて、封じられる人を見つけることができずそのままになっていたのだとか……。
裕子は祖母が起きたときに離れの部屋の前で座り込んで、ぶつぶつ何かつぶやいていたそうで、慌てて居間に連れてきたけどずっと虚ろな目の状態で話しかけても反応しないのだとか……。

祖母に出かけるから着替えなさいと言われ、着替えを済ませると裕子と一緒に近くのお寺に連れて行かれかれました。
そこには裕子のお母さんもいて、裕子を見て号泣していました。
お坊さんの話によると、部屋の中にいた一番ヤバイものに裕子が憑りつかれてしまっていると……。
除霊を行なったのですが、なかなか強力な相手だったらしく裕子の精神は戻らないままで、結局そのまま精神病院に入れられることになりました。
学校では親の都合で転勤、と伝えられそれ以降裕子の姿を見ることはありませんでしたし、私は裕子の親から憎まれ、お見舞いすら行くことができませんでした。
その後すぐにあの離れは取り壊されて、亡くなった方をお祀りする小さな祠が建てられました。
それ以降、家の中でおかしなことは起きていませんが、結局「一番ヤバイもの」が何だったのかは教えてもらえませんでした。
最近人づてに聞いた話だと、入院していた裕子が病室からいなくなり行方不明になってしまったのだとか……。
裕子に憑りついた「一番ヤバイもの」って、もしかしてあの部屋で亡くなった人の恨みが強くて、悪霊にでもなってしまったものなのでしょうか。
家の中を歩いていたのも、もしかしたら憑りつく相手を探していたのかもしれないと思うと、ゾッとします。



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