【怖い話】4番目のきみちゃん

短編の怖い話



以前勤めていた保育所は少人数制で、園児たち一人ひとりがとてものびのびとしていて、仲良くやっていた園でした。
親御さんと保育園側、保育士の関係も他と比べるとかなり良好で、とても働きやすかったのですが、ひとつだけ問題があったんです。
それは毎日お昼寝の時間になると、園児の誰かが必ず「きみちゃんが呼んでる」と言って、起きてくること。
私の担当しているクラスや隣のクラスに「きみちゃん」という名前の子はいないんですよ。
他の園の子で、うちの園の子が知り合いで寝ぼけているのかとも思ったのですが、親御さんに聞いてもきみちゃんという子を知っている人はいませんでした。
最初のうちは夢でも見て寝ぼけているんだろうと思ってあまり気にしなかったのですが、毎日違う子がきみちゃんの名前を口にするので一度園長に相談したんです。
そうしたら園長、きみちゃんの名前を聞いた途端に顔色が真っ青に。
「…昔きみちゃんという子はいたけれど、無事に卒園している」
と言いつつも何か隠しているようでした。

そしてもうひとつ、私が個人的に気になっていたことがあって。
私の担当しているクラスの出席簿、なぜか4番が空欄になっているんです。
園長に聞いたら「縁起が悪いと嫌う親御さんがいるから」という理由で空欄にしているという話だったのですが、今どきそんなこと気にする人がいるのかと不思議でなりませんでした。

ある日のこと。
保育園内のグラウンドで子供たちと鬼ごっこをしていたのですが、このとき園児のひとりが「きみちゃんが鬼!」と言い出したんです。
そうしたら他の子たちが一斉に逃げ出したのですが、私にはその「きみちゃん」が見えないのでふざけてるのだと思い、一度園児を一カ所に集めようとしたときに上着のすそを誰かに引っ張られたんです。
振り返ってみるとそこには誰もいなかったのですが、影を見ると自分以外に幼稚園児くらいの小さな影が…。
びっくりして動けないでいるとたまたま通りかかった園長が声をかけてくれたおかげで動けるようになったのですが、このとき園長はとてもバツの悪そうな顔をしていました。

その後もことあるごとに園児たちがきみちゃんのことを口にするようになり、隣のクラスでもきみちゃんと遊ぶ、きみちゃんが、と言い出す子が出始める始末。
それ以来私や隣のクラスのY先生は、服を引っ張られたり誰もいないのに声を聞くなどという心霊現象に悩まされていました。

あまりにも園児たちがきみちゃんのことを口にするため、保護者の間でも話題になっていてきみちゃんについて聞かれることが多くなってきたため、Y先生と一緒に園長に本当に何も知らないのか聞き出すことにしたんです。

園児たちが帰宅してから私とY先生、園長とで事務室で話をしたのですが…。
園長の話ではきみちゃんという子はごく普通の子で特に何の問題もなく保育園を卒業したのですが、弟がいて卒援後たまにお母さんと一緒に弟を迎えに来ることがあったそうです。
ある日、たまたまお母さんが仕事の関係で迎えにこれないからときみちゃんが一人で弟を迎えにきたことがあったそうなのですが…。
このとき運悪くきみちゃんは園の前で、猛スピードで走ってきたトラックにはねられ亡くなってしまったそうなんです。
ここまでならかわいそうな話で終わるのですが、園長の話はそこからが本題でした。

きみちゃんが事故でなくなってからお母さんの精神状態が思わしくなく、一家は引っ越すことになりきみちゃんの弟は他の保育園へ。
それ以来、なぜか深夜の園の前に女の子がひとりでポツンと立っている、保育園内で誰もいないのに声がしたり子どもたちが「きみちゃん」という子の名前を口にする、といったことが起こるようになったそうなんです。
もしかして亡くなったきみちゃんの霊が、弟を探してまだ残っているのではと、きみちゃんの出席番号「4番」を他の子に使うのをやめ、お祓いをしてからは不思議な現象はなくなっていたそうなのですが…。
一体なぜ今頃になって子供たちがきみちゃんのことを口にし始めたのか、園長も不思議に思って一人で色々と調べていたそうなんです。
そして分かったのが、今年入園して私が担当しているクラスのC君の父親が、あのきみちゃんの弟さんだったのです!
それを聞いてふと思い出したのが…一番初めにきみちゃんの名前を口にしたのは、C君だったこと。
血縁者ということで、きみちゃんが弟と間違えているのではないか、このまま何もなければいいけど、と3人で不安になっていましたがこれといった対策も思いつきませんでした。

その後もきみちゃんの名前は園児たちの間で聞くことが多かったし、不思議な現象もありましたが卒園式間近になってぱったりと止まったんです。
このまま無事に終わればいいね、とY先生と話しをしていた矢先にC君が保育園の門前でお母さんを待っているときにバイクにはねられるという事故に遭ってしまったんです。
幸いC君のケガは軽く、後遺症も残らないですんだのですが…。
私、このとき見てしまったんです。
門の前に立っていたC君の隣に、ズタボロ状態の女の子が立っていてC君を突き飛ばすのを。
そしてはねられたC君を見てにっこり笑っていたことを。
今でもあの女の子の顔を思い出すとぞっとします。
C君が卒園して間もなく諸事情あって園をやめたので、その後も園児たちの間できみちゃんについて話題になっているのかはわかりません。



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