【怖い話】動物に関する不思議な体験

実話の怖い話



私と旦那の樹一(キイチ)は、動物の不思議な体験と何かしら縁がある。
その中から、幾つかの動物に関する霊的な事、不思議な事を話したいと思う。

私の近所の公園には“お猫さま”という長寿の猫がいる。
野良猫なのだが、もう二十年近く生きているらしい。

お猫さま、お猫さま、と慕われて、でっぷりと太った猫から、夜に人間の言葉で話しかけられただの、尻尾が二つ生えている処を目撃しただの、そんな噂が絶えなかった。また、お猫さまに話しかけられた人間は、数日後に起こる災厄を警告してくれるので、お猫さまの言う事を聞くと、交通事故を免れたり、火事にならなかったり、給料袋を落とさなかったりして難から救われる事が多かったらしい。

今の旦那で、当時、大学時代から付き合い始めていた樹一がお猫さまに興味を持ったんだ。彼は私と同様に不思議な能力があった。
所謂、霊感と言う奴だが、動物霊や動物の怪異ばかり遭遇していた。彼とは本当に不思議な巡り合わせだと思う。

公園でお猫さまを見たとき、樹一は最初、手にしていたパンを千切って投げていた。お猫さまはベンチの上に座って、樹一を一瞥すると、すぐにまた眠りに付いた。

「こいつ、反応しないな」
樹一は残念そうな顔をした。

しばらくして、私と樹一は近くのファミレスに行って、だらだらと取り留めない会話を続けていた。漠然と将来の事とかを語り合っていたように覚えている。

それから、夜になって、私と樹一は公園に再び向かった。樹一がワニのキーホルダーが付いた車の鍵を無くしたと言い始めたからだ。

すると、公園のベンチの上には、お猫さまがいて、キーホルダー付きのワニの鍵を手にしていた。樹一はなんだよ、と言いながら、お猫さまから車の鍵を取り返そうとしたのだが、ぐるるる、とお猫さまは唸っていて、鋭い牙が見えた。上手い具合に取り返せそうにない。

「おい。馬鹿猫。車の鍵、返せよ」
樹一が手を伸ばす。
すると、お猫さまは、樹一の指先にがりっ、と、爪を立てて、確かにこう言ったのだった。

「猫缶、猫缶」と。
樹一は気分を害しながらも、近くのコンビニまで行って猫缶を買ってきて、缶を開けて、お猫さまに渡した。お猫様はまるで、人間がキャッチボールでもするように、樹一の手にキーホルダー付きの車の鍵を投げ渡したのだった。

そして、瞬く間に猫缶の中身を平らげると、去り際に、私と樹一の耳元にこう告げた。

「明日の夜。××通りでは車を運転しないように」

私と樹一はぽかーんとしながら、そのまま車に戻っていった。

次の日、バイトが終わって、樹一はお猫さまに言われたように、××通りを迂回して避けて通ったのだそうな。すると、夜にニュースが流れてきて、××通りで大事故が起こって、複数の車がぶつかり合って、大惨事になっていたそうだ。時刻的に考えて、樹一もその事故に巻き込まれていた可能性が高く、お猫さまのお陰で災難を逃れたとラインで送ってきた。

喋る猫。更に事故を予言する猫、お猫さま。
今も、近所の公園に現れるらしい。一体、何歳の化け猫なのだろう?

お猫さま以外にも、奇妙な動物の怪異と出会った事がある。

樹一と付き合い始めて、一年後の事だった。

動物と言っても、鳥だった。
文鳥だろうか。
所謂、鳥の動物霊だった。

その鳥は半透明になっており、よく樹一の車の後部座席に座っていた。たまに、車の中で羽ばたいたりして、樹一は迷惑していた。ただ、文鳥はしきりに、窓のある方角に向かって飛び立とうとしていた。文鳥の動きをナビゲーターのようにして、樹一はバックミラーを見ながら運転していった。

そして、見つけた先は、車道の街路樹が鬱蒼と茂っている場所だった。

樹一はそこに駐車すると、私と一緒に街路樹の土の辺りを調べていた。半透明な姿の文鳥はこの辺りを飛んでいた。

街路樹の土には、白骨化した鳥の骨が見つかった。
多分、何かの拍子に車にはね飛ばされて、死体がこの街路樹の中に落っこちたのだろう。私と樹一はその鳥の骨に線香を上げて、供養した。

他にもある。

あれは、私と樹一が動物園にデートに行った時の事だった。

色々な動物を見て会話に花を咲かせていたが、ふと、元気のなさそうなメスのライオンがいた。私達が檻に近付くと、メスライオンもこちらに近付いてきた。
そして、メスライオンは何と私達に話しかけてきたのだった。

「昔、人間だった頃に私は人を殺した。金品を強奪する為に。畜生道に落ちて、今、凶暴なライオンに生まれ変わった。あんたらはそういう事をするもんじゃないよ」

そう言って、メスライオンは去っていった。
どうも、病気で体調がよくないらしい。檻の奥で静かに横になっていた。

明らかに人語で話しかけてきたのもあって、私と樹一は顔を見合わせて、何とも言えない表情になった。

こんな話もある。
私達が通っていた大学での事だった。
ある日、大学の敷地内に犬が迷い込んできた。

少し小汚い茶色い毛色の犬だった。種類はよく分からない。その犬は他の学生達から可愛がられていたが、急に私達二人の下へと走り去ってきた。そして、何とか、注意を惹き付けたいのか私達の周辺にいた。その時は二限目が始まる前の休み時間だったので、放置していたが、その犬は五限目が終わった後も、日が暮れている中、私達を見つけて走り寄ってきたので、なんだろうと思って、私と樹一はその犬の後に付いていく事になった。

しばらく犬に誘導されるように、後を追っていくと、狭い路地裏に入り込んで、小さな一軒家の中に入る事になった。上がってよいのか迷ったが、玄関は開けっぱなしになっていた。そのまま私達二人は犬に誘われるまま、家の中に入っていくと、寝室で一人の老人が寝たきりで動かなくなっている。少し臭い。明らかに孤独死だった。どうやら、お爺さんみたいだった。その犬はぽつんと座っては舌を出していた。
樹一はすぐに警察に電話をした。

警察が来て、私達が見つけてくれなければ、おそらくはそのまま老人は骨になるまで発見されなかった可能性もある、と言われた。他人の家への不法侵入に関しては、特に注意は受けなかったように記憶している。

そう言えば、犬の話と言えば、うちの家族が飼っていたポメラニアンが結構な年齢だった。私は余り関心が無かったが、樹一が実家に遊びに来た時に、そのポメラニアンとしきりに話をしていたみたいだった。

何でも、私の事はもっと気にかけて欲しいと考えている。家に来て二歳の時に私がよく散歩に連れていってくれた事には感謝している。ドッグフードよりもチョコレート付きのビスケットの方が美味しい。小さい頃、よくボールで遊んでくれた事も鮮明に覚えているとの事だった。
それから、多分、三年後には自分は亡くなるだろうから、もっと遊んで欲しい、との事らしい。

私は自分の飼い犬に対して、なんだか言いようがないくらいに涙が出てきた。この子をもっと大切にしないと、と思い、実家に戻る際には、もっと積極的にかまうようにした。そして、三年後、実際に亡くなった……。

それから、他にも幾つかの小さなエピソードがあるが、またそれは次の機会にでも話そうと思う。
私と樹一が出会って、結婚して何年も経つが、この先も、何かと動物達に関する不思議な話は増えていくのだろう。おそらく、二人共、特殊な霊感のようなものを持っているのだと思う。



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