【怖い話】殺人鬼の夢

実話の怖い話



一年とちょっと前から見ている、ある奇妙な夢の事を話そうと思います。
その夢を立て続けに見た事によって私に振りかかる災いは続いています。お祓いなどをしてくれる然るべき場所に何件か見て貰ったのですが、何の解決にもなりませんでした。

また、私は所謂、一般的に“メンヘラ”と呼ばれる類の女で、私のこの話は病気の症状だろ、と一笑されるかもしれません。
私自身、最初は心の病気か何かかと思って、病院にも行ったのですが、幾つかの処方薬が出されただけで、夢の件に関しては、私は正常との事でした。

ただ、怪異は続いています。
みなさまのうちの誰かが、この文章を眼にする頃には、私はこの世にいないか、あるいは恐怖とストレスで本当に狂ってしまって、廃人同然になっているかもしれません。

それでは私に起きた、ある災い、としか言いようがないものに関してお話しようと思います。

ある時の事です。
気付くと、私は、真っ赤な部屋の中にいました。
どうやら、これは夢の中なんだろうなあと、漠然と気付いていました。
明晰夢、という奴ですね。夢を見ている時に、それが夢であるという事に気が付いてしまう事なんです。

朝、目が覚めると、あの夢が何だったのかを思い出そうとしますが、思い出せないんです。
何かとてつもなく怖ろしい夢であった事は間違いないのですが、とても思い出せません。
ただ、漠然と朝起きてぼうっとしていると、真っ赤な部屋の中にいた事と、何かから逃げていた事だけは思い出せるんですよ。それ以上はどうやっても思い出せそうにありません。

そして、そのまま私は大学へと通いました。
当時、私は学校のストレスで大学を休みがちでした。サボっているというよりも、休みがち、といった方が適切だったかもしれません。何しろ、お恥ずかしいながら、その頃から、心療内科、つまり、心の病院に通っていたわけですから。
白状しますと、私は高校の頃に友達がいなく、酷いイジメを受けていた為に、そのせいで高校から不登校気味になり、何とか出席日数ギリギリで卒業して志望する大学に入学出来た後も、酷い対人恐怖症に陥ってしまって、鬱の症状で心療内科に通い始めたわけです。当初、私の両親は、心の病院に通院したいという私に対して眉を顰めていましたが、すぐに二度返事で快諾してくれました。

両親いわく、昔は精神科、心療内科に通っている、入院した、というだけで、世間体から大きな好奇の眼で見られたらしいです。また親戚と会う時も非常に居心地が悪かったそうです。でも、今の時代ってもっと心の病気に関して理解があるみたいですね。すぐに病院には通えました。

少し、回りくどくて、すみません。
私に起こった怪異についてお話しましょうか。

私はあの赤い部屋の夢を見た後、大学に通う準備に取り掛かりながら、途中、酷い頭痛に襲われて、家に帰る事にしました。単位の方は気になりましたが、それでも学校に行けるような身体の状態ではありませんでした。動悸は激しくなり、眩暈がしていました。また、いつもの病気の症状なのだろう、と思っていました。

帰り道に私の頭の中で、昨晩見た、夢を思い出していました。

刃物を持った何者かが私を追い掛けてくる。
そして、私はその何者かから必死で逃げている夢でした。
執拗なまでに、何者かは追い掛けてくるのです。その追い掛けてくる者が手にしている刃物は大型の鉈でした。所々が錆びて、刃こぼれがしており、そして赤い真っ赤な血が付着していました。

そして、私は目を覚ました。

酷い悪夢だったのです。とても怖かった。
そして、私は家へと帰る坂道の途中にある花壇で奇妙なものを見つけました。
それは、大型の鉈が置かれていました。
血こそ付着してはいなかったものの、確かに、私は夢の中で見たそれでした。何故、こんな処に置かれているのだろう? 私は疑問ばかりが募りました。

その日は本当にうだるような暑さで、時計を見ると、午後の11時近くになっていました。私は、歯も磨かずに、ベッドの上に転がり込みました。寝る前に頓服として出される精神安定剤を口にしました。その後、私はウトウトと、眠りに付きました。

また、夢の中にいました。

そこは何処かの工場の中にいるかのようでした。
幾つもの鉄パイプが見えます。蒸気のようなものも噴出しています。

しゃり、しゃり、しゃり、しゃり、と、奇妙な音が聞こえてきました。
どうやら、何か、刃物と刃物を擦り合わせているような音です。
私は声にならない声を出していました。

そして、その人物は近付いてきました。
服装はボロ切れのようなものをまとっています。
右手には手斧、左手には大型の包丁を持っていました。その人物の顔は暗くてよく分かりません。年齢も、性別も分からないのです。ただ、その人物が沢山の人間を殺しているであろう事はすぐに分かりました。

血の臭い。
そして、酷い腐敗臭が私の鼻にこびり付いてきます。
私はその場で嘔吐しそうになりました。

その後に、追いかけっこの始まりでした。
そして思い出しました。昨日の夜も、この殺人鬼から逃げていた事に。

途中、奇妙なものを踏みました。
どうやら、人間の臓物や手首、それからグチャグチャに解体された頭部などでした。私は泣きながらそれらを踏み潰して、逃げ続けました。背後から、殺人鬼は追ってきます。私は工場の中を必死で逃げ続けました。

刃物によって背中を切り裂かれました。
物凄い激痛が背中を走りましたが、走れない程ではありませんでした。
そしてもうすぐ捕まる、といった処で私は夢から覚めました。
私は凄まじい背中の激痛に苦しみながら洗面所に向かい、自身の背中を見ました。すると、肩甲骨の辺りから腰骨の辺りまで刃物で切られた傷が出来ていました。頭がぼんやりとしていたので気付いていなかったのですが、私の服は血塗れでした。
自室のベッドに戻って分かった事なのですが、カミソリが転がっていました。どうやら、それが寝ている私の背中を切り裂いたものみたいでした。……何故、こんな場所にカミソリが転がっているのかは分かりません。

そして、私はその日のうちにネットで検索して、近くのお寺や神社などを探してお祓いをして貰おうと思ったのです。
それにしても、よくネットにある怖い話やホラー映画などでは、何か怪異にあったら、すぐに知り合いに住職さんや霊感のある人がいて、頼りにするじゃないですか。私、そういった話って、変だなあ、とか思っちゃったわけですよ、その時。だって、思い当たらなかったんです。私は友達が少なかったからかもしれません。私の知り合いに霊感のある人間なんていなかったんです。
仕方なく胡散臭く思いながらも、ネットで検索して私の家の周囲にお祓いをしてくれるお寺や神社などが無いか探しました。すると、幾つか存在していて、私は藁にも縋る思いで、そのうちの一つの神社にすぐに向かいました。

お祓いや祈祷が出来る時間は、夕方の四時までと書かれていました。
今は、正午の二時を過ぎた処でした。
急いで向かいましたが、道に迷って、またあのうだるような暑さと眩暈にやられてしまって、その神社に辿り着いたのは、夕方の五時をとっくに過ぎていました。
中に入って神主に頼み込もうとしましたが、神主さんはいませんでした。
仕方なく、その夜は帰る事にしました。
夜、また悪夢に襲われました。
そして、今度は私の右太股を刃で切り裂かれていました。

次の日に、同じ神社に行って、神主さんに話を聞いて貰うと、何か難しい厄除けの話などを聞かされたのですが。結局は神主さんの「人生論」や「お説教」みたいなものでした。病は気から、というわけです。私が現在、大学を休みがちで、心の病気にも掛かっている事を話したからかもしれませんね。
つまり、その神社のお祓いは、まるで役に立ちませんでした。

けれども、私に対する怪異は続いています。
いつ、襲ってくるかは分かりません。
数日の間、立て続けに、身体の一部を切り裂かれて出血した事や、たまに夢の中で襲われる事なく数ヶ月間は何事も無かった時もあります。やっと、あの得体の知れない夢の中の殺人鬼から逃れる事が出来たな、と思っていて、週に一、二回、バイトなんかを始めた時もありましたが。やはり、ある夜、夢の中で襲ってきて、首の近くから出血していた事もあります。左手薬指の爪が剥がされた事もあります。目蓋を切り裂かれて右目の中に沢山の血が入っていた事も……。

お寺や神社にお祓いに行くと、霊視されて何も見えない、心の病だ、と言われます。
あるいは、前世の因縁がどうとか、先祖供養をすればどうにかなる、みたいな事を言われて、実際にお金を払ってお祓いをしてみても何も効果はありません。

精神科医の先生は、その夢に関しては、気の持ちようや、ましてや、心の病気では無いと言ってくれます。
リストカットなどの自傷行為にしては、首の下や背中といった明らかに不自然な場所に傷が出来ている。大量に刺された針の後もおかしい、と言ってくれました。そして、両親からの虐待も疑われましたが、私は首を横に振りました。

結局、一年以上経ちましたが、解決されずにいます。
そう言えば、夢の中で襲ってくる殺人鬼は、何となく、私を虐めていたクラスメイト達に雰囲気が似ていなくもありません。一度だけ、夢の中で後ろを振り返らずに逃げている最中にあった鏡で殺人鬼の顔をちらりとみましたが、殺人鬼の眼と口元だけが見えて、何処となく私をトイレに連れ込んで虫や汚物を食べさせたりしたクラスメイトの一人に表情が似ているような気もします。カマキリとか、獰猛な昆虫のような眼です。あの殺人鬼は、私のイジメのトラウマが形になった姿なのでしょうか。

それでは、私の話は終わります。
霊感の強い人に神主やお坊さんに相談しても、医者に相談しても、まるで一向に怪異は終わりません。私自身、疲弊し、絶望しながら毎日を生きています。
いつ襲ってくるか分からない夢の中の殺人鬼にどう対処すればいいんですか? 私の妄想なのでしょうか? でも、私は現実で本当に傷を負っています。いっそ殺されて、もう楽になりたい、と思う時も多いです。

そんな私の体験を聞いてくださって、ありがとうございました。



実話の怖い話

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

怖い話.com

怖い話が好きでブログ更新してます。 オカルト、怖い話、ホラーのジャンルが好きな方にオススメのブログです。