【怖い話】首吊りの家

実話の怖い話



私が住んでいる住宅街は、割りと最近できたところです。
最近と言っても、かれこれ5年くらいでしょうか。うちの娘がまだ赤ちゃんの頃でしたから。
分譲地で一気に売りに出されましてね。うちが買った土地の区画は、住宅街の中でも不人気でした。
バス停からも遠いし、土地も長細くて狭いもんですから…なかなか売れなかったんでしょうね。
10棟分くらい売れ残ってましたが、中でもうちが一番に土地を買って、着工したんです。
他の土地もだんだん売れ始めて、うちが引き渡しの頃にはほとんどの土地で、上棟していましたよ。
先程言った通り、うちは他のお宅よりもひと足早く着工したもんですから、他のお宅かマイホームを建ててる最中に引っ越しをして住み始めたんです。
そうしているとね、色んな人が挨拶にいらっしゃるんですよ。ご近所さんになるからって皆さん気を使ってくださってね。
大体みんな同い年くらいで、小さいお子さんのいるご家族ばかりでした。
土地の価格や立地などから、家を建てる人の年収や年齢、家族構成が似通って来るのは当たり前のことなんでしょうね。
でも、うちのお隣さんになる方は私たち夫婦よりも少し若い方でした。

うちに挨拶に来た当時で、旦那さんは20代半ばくらいだったと思います。
いかにも営業マンといった感じの、気さくで明るい方で、笑顔を絶やさないおしゃべりな方でした。
奥さんの方は…正直私はあまり奥さんとは会っていないんです。
旦那さんは毎週末、建設中のマイホームを見に、しよっちゅう車で来てましたが、奥さんはあまり一緒に来ませんでした。
月に一度くらい一緒に来ることがあって、その時にしかお会い出来ませんでしたが、旦那さんとはえらい違いでした。

いつも顔色が悪くて、髪も艶が無く、ガリガリに痩せてサイズの合っていない服を着ていました。恐らく、妊娠前に着ていた服なんでしょうね。
元気な2歳くらいの男の子の手を引いて、いつも疲れたような虚ろな目をしていました。
旦那さんに「奥様はお疲れのようですね」と言うと…

「あぁ。夜中も土日も仕事してますからねぇ。でも平日の昼間は子供と家にいるので、休む時間はいくらでもあるはずなんですよ。家事と育児しかすることないんだから、暇でしょうし」

妻の様子よりもマイホームに夢中になっているようでした。
今思うと、奥さんは完全な育児ノイローゼだったのかもしれません。寝る時間も惜しんで仕事をし、日中は自己主張をするようになった息子の相手で食べるのもままならず…だからあんなに痩せていたのでしょう。

若くマイホームに夢中な夫。
育児と家事と仕事で疲れきってノイローゼになっている妻。

厄介なお隣さん…私は元気嫌な予感がしました。
そしてその予感は、最悪の形で的中してしまったのです。

ある日の朝、まだ建設中のお隣の家で首吊りの死体が発見されました。
それは、あの奧さんでした。
作業員の方が使う足場に縄を結び付けて、首を吊ったようです。昼間は作業員が仕事をしていますので、恐らく夜中にこっそりやって来て実行したのでしょう。
しかも死んだのは奧さんだけでなく、息子さんも亡くなっていたといいます。奥さんの死体のすぐ近くに、首を絞められた子供の死体があったと…
旦那さんに子供を任せるのが不安だったから、お子さんも連れていったのでしょうか。あまりにも不幸な事件に、周辺のお宅はみな衝撃を受けました。
旦那さんも驚いた様子でしたが、それでも家の建設は辞めず、2か月後に完成し、一人で暮らし始めたのです。

理想のマイホーム…妻と子供を最悪の形で亡くし、どんな思いで住んでいたのでしょう。

しばらくの間は何事もありませんでした。
しかし、ある夜のこと…日中にしまい忘れた洗濯物を取り込もうと2階のベランダに出ました。通りに面した我が家のベランダからは、少し首を回しただけで周辺の家が見えます。
お隣さんは留守のようで、明かりが点いていませんでした。
ふと下に目を向けると、誰かがお隣さんの家の前に立っています。
細い体の女性と、まだ小さな男の子…
身体中が、ぞくりと粟立ちました。

この人は間違いなく、首を吊ったお隣の奧さんと子供…

生気を感じられない気配を醸し出し、佇む姿は、どこか寂しく…憎悪に満ちていました。
私は洗濯物を取り込むのも忘れ、1階に駆け降り、外へ出ました。
奧さん!そう大声を出しながらドアを開け外へ出ると…そこには誰もいませんでした。

それから2回ほど、二人の姿を見かけたことがあります。
気味の悪い出来事ですので、誰にも話せずにいましたが、偶然ゴミ捨て場でお隣の旦那さんとお会いすることがあって、少し話をしました。

「おかしなことを聞くようですが、何もお変わりありませんか?」
「いえ…特に何もありませんが…」
「実は…何度かこの辺りで奧さんとお子さんを見かけてるんです。本当に何もありませんか?」
「……何もありません。本当に、何もありませんから」

一瞬、彼の顔がサッと蒼くなりました。
あぁ…やはり来ているんだ…
それから旦那さんは、毎日夜遅くに帰宅するようになり、土日も働きに出ていました。
元々奥さんの稼ぎも考えた上でのローン返済計画だったのでしょう。1馬力では破綻します。
旦那さんは見かけるたびにやつれ、目も虚ろになっていきました。それはまるで、あの奥さんのような姿でした…

精神的にも病んだのか、真夜中になると隣から叫び声が聞こえるようになりました。
許してくれ!もう来ないでくれ!
叫びは日々悲痛さと狂気を増していき、私たち近隣住民の間でも、どうにかできないかと頭を悩ませるほどになっていました。
しかしその叫びは、ある日を境に一切聞こえなくなりました。

お隣の旦那さんが、家の中で首を吊って亡くなっていたのです。

旦那さんが亡くなった場所は、ちょうど奧さんが首を吊った場所と同じだったと聞いています。

家は売りに出され、最近になって買い手がつきました。
妊娠中の奧さんと旦那さん、幼稚園のお子さんがいる家族です。

首吊りが2件も起きた家と知って買ったのでしょうか…それは聞くに聞けません。
ですが最近になって、また見かけるようになったんです。

家の前に佇む、痩せ細った女性と小さな男の子を…

もしかしたら、また誰かがあの家で首を吊るかもしれません…

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