【怖い話】非通知

短編の怖い話



非通知の電話。誰もが一度は経験したことがあるだろう。ただのいたずらか、売り込みか、それとも…何か他の意図があるのか。

夏の終わり、繁華街から少し離れたアパートに住む小島という男がいた。彼はコールセンターで働いており、普段から電話の取り扱いには慣れていた。しかし、ある日から彼のスマートフォンには非通知での着信が増え始めた。

最初は気にしていなかった。しかし、着信が毎晩のようになり、内容も変わってきた。

「…」

何も言わずに切られることもあれば、息を荒くする音だけが聞こえることも。小島は次第にその電話に恐怖を覚え始めた。友人に相談しても「ただのいたずらだろ?」と軽くあしらわれるばかり。

しかし、ある晩、また非通知からの着信が。

「小島…」

名前を呼ばれた瞬間、彼は凍りついた。これはいたずらではない。何者かが彼を狙っている。

翌日、彼は仕事を休んで、警察に相談に行った。しかし、「直接の脅迫がない限り手を出せない」と言われる。

夜、再び非通知からの着信。

「アパートの前にいるよ…」

彼は慌てて窓を覗いたが、誰も見当たらない。しかし、電話の向こうからはアパートの前の音が聞こえてくる。風鈴の音、鳴き鳥の音。まるで彼をからかうかのように。

彼は恐怖で動けなくなったが、電話を切ってすぐに友人の家に逃げることを決意した。

とっとと服を纏い、外に出ようとドアノブに手をかけると…ドアが外からゆっくりと開かれた。

非通知からの最後のメッセージは、彼のスマートフォンに残された。

「…家に入ったよ」

この事件から数日後、彼のアパートには新しい住人が引っ越してきた。近所の住人たちが新しい住人に「前に住んでいた人はどうしたの?」と尋ねると、新住人は答えた。

「非通知からの電話で追い出されたみたいだよ。」

そして、その夜、新しい住人のスマートフォンにも非通知からの着信があった。



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