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【怖い話】加害者たちの心霊写真

短編の怖い話



どこの学校にも、いじめはあると思います。それは日本だけでなく、世界中どの国に行ってもそうでしょう。まったくいじめのない学校なんて、このご時世有り得ない。
小学校、中学校、高校、大学…度合いの差はあれど、いじめというものは学生生活と切り離して考えることの出来ないものです。
僕が過ごした高校にも、やはりいじめはありました。そして僕は、いじめを肌で感じていた人間です。

誰にいじめられたのかって?いいえ、違います。
僕は、いじめられていたのではありません。
いじめていたのです。クラスメイトを。Yくんを。

Yくんがいじめの被害者という言い方をするならば、僕はいじめの加害者に当たります。
なぜYくんをいじめていたのか?と聞かれると、正直な話、自分でもよく分からないのです。
別に彼が僕に対して何かをしたわけではありません。
Yくん自身が気持ち悪い趣味を持っていたり、人を不快にさせるような振る舞いをしていたわけでもありません。
彼はどこにでもいる、少し体が小さくて色の白い、大人しい男子高校生でした。

Yくんがいじめられていた理由は、僕がよく一緒に行動していたグループのリーダー格、AくんがなんとなくYくんのことを嫌っていたからでしょう。
AくんがYくんをいじめるようになってから、グループだけでなく、クラス全体がいじめの空気をまとっていきました。

男子のいじめというものは、女子とは違う陰湿さがあります。
Aくん、Bくん、Cくんと僕の4人グループは、高校2年生の半ばからYくんに対して様々な仕打ちをしてきました。
他の生徒の前で服を脱がせたり、アルバイト代や小遣いを巻き上げたり、頭から冷たい水をかぶせたり、宿題や係の仕事をYくん一人に押し付けたり…。
殴る蹴るの暴行こそありませんでしたが、精神を傷付ける行為は毎日のように行っていました。
最初は小さなからかいだったものが、山火事のようにどんどんと燃え広がり、Yくんをいじめることへの罪悪感は僕の中で麻痺していきました。

そして高校3年生の秋。彼は自宅で首を吊って亡くなりました。
遺書は無く、自殺の理由はいじめであると断定はされませんでした。不思議な話ではありますが、この当時Yくんの両親は、Yくんの進路をめぐって揉めていたらしく、それも自殺の原因になたるのではないかと大人たちは考えていました。
彼の自殺により、麻痺していた感覚は大きな後悔へと変わりました。僕たちは、一人の人生を奪うという大きすぎる罪を犯してしまったのです。

Yくんが自殺しても、残酷なことですが世の中も月日も何事も無かったかのように進んでいきます。
僕は3年生になってから、クラスごとの卒業アルバムの編集係をやっていました。
秋ごろから集めた写真の中から、どれをアルバムに入れるかという作業を進めていました。
写真というのは様々で、3年生になってからの学校行事で撮られたものや、普段の教室での様子、部活中のもの…持ち寄った人によって写っている人物に差が出てしまっているので、その差を感じさせないように写真を選んでいかないといけません。

10月に入ったばかりの放課後、僕とBくんは写真の選別作業をしていました。
繋げた机の上に広げられた写真を見て、話し合いをしながらどれがいいかを選んでいきます。
その中には、僕たちが写っているものもありました。いつもの4人グループ全員が写っているものです。

「これいつ撮ったやつ?」
「確か夏休み前だったと思う。誰撮ったんだろう」

その一葉の写真は、夏休みを目前にしたある日の昼休みのものでした。
教室でAくん、Bくん、Cくん、そして僕が弁当やコンビニのおにぎりを机の上に広げて、カメラに向かって満面の笑みでピースサインをしています。
どこにでもありそうな、男子高生たちの日常を切り取った写真です。一体誰が撮影したのか…僕の記憶には無い写真でした。
僕はこの写真にどこか違和感のようなものを覚えました。
爽やかに笑っている僕たちの顔…でも見ているだけで背中にぞわぞわと何かが這い回っているかのような、気持ち悪さがありました。
そしてよく見ると、僕たち全員の顔の部分に僅かではありますが、もやっとした白い影がかかっていたのです。
目を凝らして見なければ気付かない程度のものですが、どうも不気味な空気を持った写真です。
Bくんはいつものグループ全員が写っているし、アルバムに使おうと言いましたが、僕はこの違和感を拭い去ることが出来ず、アルバムに使うことを拒否しました。
そしてこっそりと、その写真を持ち帰ったのです…。

高校を卒業し、僕たちはそれぞれ違う進路を歩んでいきました。
Aくんは実家の仕事を継ぎ、僕とBくんは県外の大学に進学し、Cくんは両親と一緒に海外に行ってしまいました。
時間も合わなくなり、お互いに連絡を取り合うことが減っていきました。

卒業して1年ほど経って、久々にBくんから連絡がありました。
Aくんが仕事中に交通事故に遭い、亡くなったと知らされました…

Bくんも母親から聞かされたらしく、急遽Aくんの葬式に参加してきたそうです。Aくんのご両親から、体の損傷がひどいのであまり見ないでやってくれと泣かれてしまったと言います。
手足や胴体はそこまでひどいものでは無いけど、顔面が見るに堪えないような状態だったのだとか…
僕はその話を聞いて、不幸な事故で友人を失った悲しみよりも、恐怖にも似たぞくりとした冷たさを体中に感じました。

そして成人式を目前にしたある日、遠い異国の地でCくんが災害に巻き込まれて亡くなったという話を母から聞かされました。
母が言うには、遺体がCくんであるという確認に時間がかかってしまい、日本にいる身内への連絡が遅くなったのだとか。
どうやらCくんの遺体は、顔面が潰れていたようです。歯型の照合なども難しい状態では、確かに本人確認(しかも外国人の)は難航します。

AくんもCくんも、2人揃って顔面に損傷を受けて亡くなりました…
それに気付いた瞬間、僕はあることを思い出しました。
部屋中をひっくり返して見つけ出した、ある一葉の写真…

高校3年生の秋…アルバム用の写真選別で見た僕たちの写真です。
笑顔で写るあの日の僕たちの顔には…昔見た時よりもはっきりと白い靄がかかっていました。
それはまるで、僕たちの顔を覆い隠すかのような、そんな意思を汲み取れるほどの強烈な負の感情を纏っていました。

じっとその写真を見つめていると、あることに気付き、吐き気にも似た窒息感を覚えました。

写真の中に写る僕たち、その背後にいる女子が折り畳みミラーで髪を整えています。
その鏡に映っていたのは…

カメラを構えているYくんの姿でした。

これはYくんが撮影した写真だったのです。なぜこれがあの写真選別に混じっていたのか、誰が提出したのか…僕たちに見せるためにあの世から送り付けてきたのか…

AくんとCくんは死にました。次は僕かBくんです。
これはきっと、僕たち加害者への罰なのです。
この写真を眺めるたびに、僕は自らの人生を閉じさせてしまった彼から罰せられる日がいつなのか、それが恐ろしくて叫びたい衝動に駆られます…

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