【怖い話】予言

短編の怖い話



いとこのお姉さんから聞いた話。
お姉さんには2つ離れた弟がいた。
その弟が幼い頃、母のお腹にすがって不思議なことを言った。
「おかーさんのお腹の中に妹がいる!」
どうせ子どもの嘘だろう、そう思っているとしばらくして母の妊娠がわかった。
みんな弟の言葉を思い出したが、偶然だろうと言った。
それからお腹の中の子もすくすく育ち、性別が女の子だとわかった。
これにはみな息を呑んだが、気にしないことにした。
出産間近の時、弟はまたもや不思議なことを言った。
「妹が産まれたらいちばんにおかーさんのこと呼ぶって!」
前のこともあって少し気になったが、外れるだろうと考えた。
妹が産まれ、言葉を喋るようになった頃、妹が言った。
「まーま」
両親びっくり。嬉しさより弟の言うことがあたった驚きの方が大きかったらしい。
いとこの姉は弟になぜそんなことを言えるのか尋ねた。
「コータが教えてくれる。」
コータというのは弟が大切に飼っていたカエルのことだった。弟は欲しかった妹が産まれるとコータから聞いて、妹をずっと守りたい、というとコータからこのように言い当てられる能力のようなものをもらったという。
だがいとこの姉から見たらコータは普通のカエルだったので信じなかったらしい。
その後も弟は「誕生日にこれをプレゼントしたら喜ぶ」とか「ランドセルはこの色だったら妹も喜ぶし安全に過ごせる」「この日に風邪をひいてしまう」だとか、妹について色々なことを言い当てた。

そして妹が四年生になった。
その日は妹が遠足で弟はしつこく青い靴を履いて行くなと言った。その青い靴は妹が遠足に履いていくはずの新品で妹はこれを気にもとめず青い靴を履いて遠足に行った。弟はえらく焦っていた。
「妹がどこかに行っちゃう」
そう言って学校に行こうとせずに家で小学校からの電話を待った。
すると、昼過ぎ。学校から電話があった。妹の行方がわからなくなったという。
大勢で探し回ったが、遠足先が山の木々が生い茂るところだったので寒くもなってきたし射し込む光も少なくなった。
大人たちが焦っていたとき、母が苦い顔で家で待機させられていたいとこの姉と弟のところに来た。

「弟……妹の場所わかる?」
母は今まで弟が妹のことについて言い当てたのを信じ、そう弟に尋ねた。
すると弟は案内された遠足先に着くと、1人でずんずんと進んでいく。大人達数名がついていくと、弟はピタリと止まって呟いた。
「雨が降る」
弟が走り出し、大人達もそれについていく。しばらくすると雨が降り始め、風も強くなってきた。大人達が焦っている中、弟があるところで立ち止まってそこで妹の名前を何回か呼んだ。
「お兄ちゃん!」
すると、泥に塗れた妹が草原から出てきて弟に抱きついた。その時弟は言った。「だから青い靴を履いていくなって言ったろ」
そして妹も強く抱きしめた。

そして妹が見つかったものの、姉は嫌なことが頭を過ぎった。
——弟が妹に関係が無いことも予言し始めてる—
それがとても怖くて弟に大丈夫なのかと聞いたが、弟は笑顔で大丈夫だと答えたらしい。

そして妹が中学校に上がってから、弟は時々人を見ると怯えるようになった。
「あの人が事故で死ぬ」「あの人が自殺する」と人を見る度呟くようになったらしい。
そして弟はほとんどの人と目を合わせなくなったという。

そして弟は生気の無いような顔で外から帰ってくるようになった。父も母も心配した。
弟が言う死ぬ人たちは必ずそのようにして死んだ。

そして心配した妹が弟に話しかけた。
「お兄ちゃん大丈夫?」
妹が弟の顔を覗き込む。
そして弟はその妹の顔をまじまじと見て、笑った。
「大丈夫だよ。心配かけてごめんな」
その時のから笑いのような笑顔を、いとこの姉はよく覚えているらしい。

そしてその週の末、弟は死んだ。自殺だった。
悲しみにうちひしがれながら姉は弟の部屋の遺品整理を頼まれた。弟が死んだ後、とても遺品を整理する気にはなれなかったが、仕方なく整理し始めた。
時々出てくる思い出の品に涙をこぼしながら弟がずっと飼っているコータをどうしようかと思った。
水槽の前で悩んでいると、水槽と本棚の間に何か挟まっているのを見つけた。かなり使われた様子のスケッチブックだった。
こんなの弟が持っていただろうか、そう考えてスケッチブックを開く。
そしていとこの姉は泣き腫らした目を大きく見開いた。

そこには、妹の盗撮写真がぎっしり貼られていた。ところどころに書かれているのは間違いなく弟の文字。その文字は明らかに興奮していた。
そして最後のページに小さく書かれていた。

拝啓 お姉ちゃんへ
こんな僕になってしまって、ごめんなさい。
僕は妹を守りすぎた。だからここまでになった。
コータを池から拾った日、コータは僕を見てうまそうだといった。
そしてコータからずっと欲しかった妹ができることを知った。守りたいと思った。
コータは僕の理性を摂る代わりに予知の能力を与えると言った。幼い僕は理性なんて言葉も予知の能力っていう言葉も知らなかったから、妹を守れるならと能力をもらった。
妹が小学校四年生の遠足の日、妹のこと以外も予知できるようになってしまった。日本で起きる大災害、外国の殺人、そして、一番恐れる、人の死。知りたくないことまでも僕の頭に入ってくる。
そして奪われるのは理性。
苦しかった。
そしてある日、妹が僕に心配して話しかけたとき、僕は見てしまった。妹の、最後。
それは理性がなくなり、妹を殺す、僕の姿でもあった。
お姉ちゃん。
僕の死は間違いなんかじゃない。
僕は妹を守りたかった。
最後まで守れたさ。
今お姉ちゃんは僕の遺品を整理しているところだろう。なら、今すぐそこから離れて。
次コータに狙われるのは、お姉ちゃんだ。

そしていとこの姉はコータを近くの池に捨てた。絶対に目を合わせずに。
長らく失礼しました。



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