【怖い話】双子のつながり

短編の怖い話



自分には双子の兄貴がいたんだけど、20代で通事故で亡くなった。
昔からよく双子には普通の兄弟とは違う、テレパシーみたいなものがあるって言われてるけど、アレ本当だと思う。
何故かっていうと自分も双子じゃないと分からないだろう、っていう体験たくさんしてきたから。
両親に聞いた話だと赤ん坊のころから泣くタイミングや味の好み、好きなおもちゃとかが同じだったらしく、おもちゃの取り合いとかで俺が泣かされたたらしい。
自分自身は兄貴に泣かされた記憶はあまりなくて、物心ついたときには兄貴が欲しいといえばすぐに譲っていることが多かった。

小中学生のころは運が良かったのか同じクラスになることはなかったんだけど、その日の服とか持ち物はかなり似通ってた。
親が見分けしやすいように、って色とかデザイン微妙に違うもの持たせたりしてくれてたんだけど、家族で買い物に行ったときなんかは同じもの欲しいっていうこと多かったし、外食に行ったときも同じメニュー頼むことがほとんど。
一度俺が体育の授業でケガをしたことがあった。
クラスが別々なのもあって、お互い友達と帰るから帰宅時間がずれてたんだけど、俺がケガをした日に兄貴が帰宅途中に車にはねられそうになって転んだとかで、同じ場所をケガしたってことがあった。
このときは単なる偶然かと思ってたんだけど、その後も病気やケガをするタイミングが同じだったりっていうことが続くようになったんだ。

高校時代にはお互い希望する進路が違ったのもあって、学校は別々だったけど、兄貴が俺に、俺が兄貴に間違われることはよくあった。
高校2年くらいになってお互い彼女ができたんだけど……。
偶然彼女の名前が同じで、デートコースも被ることが多かったんだよね。
おまけに俺が一人で買ってきた洋服と同じデザイン・同じ色のものを同じタイミングで兄貴が買ってくるなんてことも多かった。
お互い趣味やら性格が似通っていたのもあって、高校に入っても兄貴とは仲よくやってたと思う。

大学に入ってからはお互い実家を離れて別々の地域の大学に通っていたんだけど、電話やLINEなんかでよくやり取りしてたんだ。
ある日、俺は風邪をひいて寝込んでたんだけど、このすごい嫌な雰囲気の夢を見た。
俺はバイクの免許持ってないんだけど、夢の中でバイクに乗って高速道路らしい道を物凄いスピードで飛ばしてたんだ。
しかも天気は雨で路面が滑りやすいし、視界も悪い状態でかなり危険だと分かってたんだけど、何かわからないけどむしゃくしゃしてて飛ばしてた。
車はそんなに多くはなかったんだけど、トラックが数台前にいて、一番手前の4トントラックっぽいのが、明らかに重量オーバーな荷物の量で尻振って走ってたんだよ。
「あ、なんかこのトラックヤバイ」
そう思った瞬間、トラックが横転。
何とかよけようとしたんだけど、雨なうえに路面にできた溝にタイヤ取られてバランスを崩して、地面にたたきつけられ勢いでそのままトラックの荷台の方に体が滑って行ったんだ。
でやっと止まったと思ったら、トラックの荷台が自分の上に……。
そこで目が覚めた。

熱があったせいもあって、汗びっしょりで起きてからも心臓がバクバクして落ち着くまで少し時間がかかった。
それで気持ちが落ち着いてから起きてシャワーで軽く汗流して着替え終わったところに、実家から電話がきたんだ。
「兄貴が死んだ」って。
一瞬、親が質の悪い冗談でも言ってるのかと思った。
理解するまで時間がかかったよ。
病気か?とも思ったけど、兄貴今まで風邪もほとんどひくような人じゃなかったし昨日も普通に話ししてたのに、一体何があったんだ?と混乱しつつも実家に戻った。

兄貴、交通事故で死んだって聞かされて何も言えなかった。
しかも兄貴は俺と違ってバイクの免許持ってたらしく、高速道路で交通事故に巻き込まれたらしいってさ。
バイクに乗る前にこのとき付き合ってた彼女が浮気したのが発覚して、その場で別れたとかって話はあとから聞いた。
多分むしゃくしゃして、スピード出して走りたかったのかなと思う。
でもね、兄貴が事故に巻き込まれた状況、俺が見た夢そのものだったんだよ。
前を走ってたトラックが横転して、その荷台と地面の間に挟まれて即死だっただろうって……。
事故を起こしたトラックの写真、見せてもらったけど夢で見たのと色や車種だけでなく、荷物の積載量もほぼ同じだった。

今まで兄貴の身に起こったこと、自分が見たり感じたりっていうことなかったんだけど、兄貴の方は俺のことがわかるってよく言ってたんだ……。
まさかこんな形で、遠く離れた場所にいる兄貴の身に起こったことを知ることになるなんて思わなかったよ。
しかもさ。
家を出たとき気付かなくて、兄貴の遺体と対面した後に気づいたんだけど、俺のスマホに兄貴からの着信があったんだよ。
1回目は俺が寝込んで夢を見ていた時間。
この時は無言で切れたんだけど。
2回目は親から連絡が来る1~2分前で、留守電にメッセージが入ってたんだ。
「ごめん、俺事故った。オヤジたちのこと頼む」
兄貴本人の声で、そう入ってた。
こんな別れ方ってなんか酷いよな。
葬式とか終わってから、兄貴の霊を見たとか声を聴いたなんてないけど、幽霊でもいいから1回会って兄貴ぶん殴りたいよ。
こんな酷い別れ方ないだろうって。
あれから時間が経つにつれ少しずつ気持ちの整理ができてきているけど、時々双子の不思議な力、もっと良い方向に働いてくれたら兄貴が死ぬの防げたんじゃないかとか思っちゃうんだよね。



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