【怖い話】ベランダの影

短編の怖い話



これは前に住んでいた部屋の話です。
うちの会社、男女関係なしに異動が多く、転勤や単身赴任なんかも他社と比べると多いんですよね。
私は経理や人事担当だったんですが、去年3カ月ほど他県にある支店のヘルプに行くことになったんです。
会社で借り上げしているアパートなんがないので、会社の方でマンスリーマンションを借りてくれることになったんです。

引っ越し一ヵ月前に、ヘルプに行く支社の様子を見に行ったついでに、借りる予定の部屋の下見もしてきました。
このときは家財道具は備え付けの小さなテレビやエアコンなどくらいだったのもあってか、開放感があって割と広い部屋だと思ってたんですよね。
一応入居前に破損しているところとかないか、チェックして後で指摘されそうなところは写真撮っておきました。

引っ越し当日、朝一で部屋に行き荷物の到着を一人で待っていたのですが、このとき誰もいないはずなのに自分以外の人の気配が始終していてちょっと気味わるいな、と思ったんです。
ただ全く知らない土地だったのもあって、神経過敏になってるのかなとも思ってあまり気にしないようにしていました。
友人や職場の人が当日手伝いを申し出てくれたのですが、短期間だったので荷物もそれほどないこともあって、1人で荷ほどき作業などをしていたんです。
お昼頃に上司が様子を見に来てくれて、一緒に近所のファミレスで食事をしたのですが、何だか妙な顔してたんですよね。
気になって聞いてみたんです。
「あの部屋、なんか気持ち悪くないか?」
上司、幽霊見える人なんですよね。
職場の飲み会なんかでたまにネタになるんですけど、家系的に霊感が強いらしくて。
「何か見えたんですか?」
「いや……見えてはいないんだけど。感覚的に何だか気持ち悪い雰囲気だった」
といって、それきり部屋の話をせず食事を終え、手伝いを申し出てくれたのですが、荷物半分以上片付いていたのでその場で解散となりました。
その後すぐに荷物整理が終わったので、買い出しがてら商店街をふらついて、特に何もせず就寝したんです。

9月下旬だったのですが、その日は夜中妙に蒸し暑くて、目が覚めたんですよね。
変な汗かいていてパジャマや下着が肌に張り付いて気持ち悪かったので、シャワーで汗を流して着替えたのですが。
ベッドに戻ったときに、ほんの少し空いていたカーテンの向こう側に何か黒くて長い棒のような影が見えてたんです。
隣の部屋か上の部屋がベランダに出している物の影かな、と思ってその日はあまり気にしていませんでした。

翌日から早速仕事で早朝に出勤、帰宅も22時ころとかなりハードな時間帯だったので、しばらくベランダに見えた丸い影のこと忘れてたんです。
引っ越してから2週間くらい経ったころでしょうか。
大分仕事にも慣れ、忙しさも軽減されて通常の時間帯に出勤して19時くらいには帰宅できるようになったんですが、その頃から部屋にいるといきなり何もないところから「バチィン!!」と大きな音がしたり、背後に人の気配を感じることが多くなったんです。
疲れてるんだろうな、と思ってたのであまり気にしないようにしていたのですが……。

引っ越ししてから2カ月ほど経ったとある金曜日、前週の休日出勤の代休で一日休みだったんです。
特に予定もなかったので、遅くまで眠ろうと思っていたのですが早朝に誰かに体をゆすられて目が覚めました。
寝ぼけていて地震か?と、慌てておきたのですが、部屋は揺れてないしで、不思議に思ってたんです。
ふと窓を見ると締めたはずのカーテンが半分くらいあいていたうえに、窓も少し空いていました。
「泥棒?」
そう思って焦って、取られたものがないか確認したのですが、特に物が移動したり、無くなったものがなく自分が寝ぼけて開けたのかなぁと思ったのですが、ふと窓を見てビックリ。
また大きな棒状の影がカーテンの向こう側にあるんです。
隣の部屋のベランダや上の部屋の人が何かベランダで干してるのが影になっているのではなく、あきらかに私の部屋のベランダになければ見えるはずないんです。
「もしかしたら泥棒が隠れてる?」
そう思ったら足が震えてきたんですが、このままにしておくわけにもいかない……そう思って、音をたてないように窓を閉めて鍵をかけ、思い切ってカーテンを一気にあけたんですが……。
誰もいませんでした。
大きな棒状の黒い影を見たのは確かなので、慌ててベランダに出て確認したのですが、隣室や上のベランダには何もなく、3階でベランダへの足場もないので人がそう簡単に逃げられる環境でもないんですよね……。

何だか気持ち悪いなぁと思いながら、土日も休みで家で久々ゆっくりしたいのもあって、買い出しにいったんです。
商店街をぶらついていたら、同僚女性に会って、お互い特に予定がなかったんでカフェに入って、女性同士で色々と話しをしていたんです。
そうしたら、ふと思い出したかのように相手が言ってきたんですよ。
「あの部屋、大丈夫?」
「何か?」
「え…もしかして何も聞いてない?」
彼女から聞いた話では、あの部屋の上の部屋で一年くらい前に自殺者がでていたのだとか。
しかもまさに私がこのときヘルプに行っていた部署の男性でした。
社内不倫がばれ、元々パワハラやモラハラもひどかったことがあって、会社を首になって自殺してしまったらしいのですが、ベランダの柵にロープを括り付けて飛び降りたという話を聞かされました。
しかも浮気相手は、私が住んでいる部屋に住んでいたそうで、遺体を下すときに私の住んでいるあの部屋も使用したのだとか。

何とも言えない気持ちになって、部屋に帰ったときにベランダに人影が見えたのですが……。
「もしかして隣人が悪戯してるのか?」
と思えて、ベランダに駆け寄ったら、真っ青な顔したおじさんが首から縄垂らして恨めしそうな顔してこちらを見ていたんです。
あまりにびっくりして腰を抜かしてしまい、その場にへたり込んだのをみたそのおじさんは、にやりと嫌な笑みを浮かべてスーッと消えていきました。

「もしかして今まで見えてたの、あのおじさん??幽霊??」
そう考えたらぞっとして、慌ててカーテン閉めて、同僚女性に連絡いれて、その日は泊めてもらい翌日付き添ってもらって部屋に戻ったのですが、土日は何も起きませんでした。
でももう怖くてカーテンは開けられませんでしたね。
夜はずっと部屋の電気つけっぱなしでした。

幸いなことにヘルプ先の案件が予定よりも早く終わって、その4日後には戻ることになったので、大急ぎで荷造りして実家に戻りました。
最終日、ふと自分の部屋のベランダを見上げたら……。
黒い人影が立っているのが目には入ったのですが、自殺された方だったのか、もしそうだとしたら彼女を探していたのかなとも思うのですが、真相は分かりません。



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